shine-Notes

ゆるふわ思考ダンプ

鬼時短を読み、上意下達と面従腹背を考える

恒例となりつつある読書ノートである。今回は短めで。

背景

例によって見習い参加している読書会の課題図書であったことが切っ掛け。あと書籍のテーマになった電通社の時短施策については多少興味を持っていたので、実際の所どういう施策をやってたんだろ?みたいな事を知りたい好奇心もあり読み始めた。

感想サマリ

で、面白かったのだが、ちょっと予想外の角度で面白さを感じてしまった。

タイトルを見ると「時短の為に行った業務上の改善施策8つ」みたいな内容を想像してしまうが、実際は「いかに上意下達の施策を本当にやり遂げるか」という視点で経営者が行うべきアクションの話をひたすら説いている。

これはこれで面白い。基本的には上意下達を当たり前だと思っている経営者の逃げ道を塞ぐ本だと思う。そして、経営者ではない自分が読んでも割と楽しめた。

以下、面白いと思った所をピックアップしたり所感を書いたりする。

面従腹背を避けるために、とにかく梯子を外さない

  • 残業規制によって発生したクライアントからのクレーム(「10時以降の残業など」)に対しては、経営者(社長)が説明に出向く。
  • 残業の原因になっているような業務プロセスは「経営者が強いたムダ」の結果であり、そのプロセスを守ってきた現場に対しては絶対に責任を求めない。

こんな感じでトップに求めるアクションとして幾つかの例示がなされているが、徹底しているのは「面従腹背を避ける」という観点だと感じた。というか、日本の大きな会社の経営において面従腹背が起きることは当たり前で、それでも上意下達で実現したいことに対しては、経営層が直接アクションすることが必須、という姿勢である。

重要なのはKPIを明確に設定し、少しでも達成感を得られるようにすること。あえて本質を突き詰めすぎない。

いちおう本書でも残業時間を減らすための施策例は何個か出てくる(残業代の発生開始時間を早くする、22時以降の残業禁止など)。ただ印象的だったのは、「なぜ時短をするのか」のような現場のワークは切り上げて、とにかく実際に残業時間が減っていく達成感を重視しよう、というスタンスだった。

スタンスに全面同意する訳では無いが、問題設定を考えると確かに妥当なのかもしれないと思わされた。そもそも現場が強い組織に対して、それでも上意下達で何かをやろうとする場合のある種のハックとでも言うべきか。

そういえば、一定規模の組織に大事なのは「進行感」である、という話が、以下の書籍でも触れられていたな、という事を思い出した。

「DX化とはデータをWebフォームに入力することである」「自動化は現場の工程は変えず工程そのものを高速化するために使う」

  • なので、ブラインドタッチができない社員を、施策の一環でタイピング講座に誘導する
  • RPA導入時は対象業務プロセスそのものは変えない。現場の主たちがやっていた業務プロセスをそのままRPAで高速化する。

といったアクションになる。エンジニア視点だとなかなか抵抗感を感じる言語化、方針じゃないだろうか。少なくとも自分はそうだった。

でも、電通規模の巨大な会社の現場を変えて、結果を出すためには、これくらいのアクションがリアルなのかもしれない。